Company
Patent
Season
Hobby
Lifework
Flower










contents3タイトル
メール送信ボタン
ホームへもどる


2004年初秋の夕方のことだった。帰宅して車から降り、今にも夕立が来そうな怪しげな空を見上げて唖然とした。
無数の見慣れぬ大きな鳥が電線に整然と止まっているのだ。
不気味な光景に一瞬、「鳥群の襲来か?」と自分の目を疑った。
ふと、昔見たことのある映画の場面を想い出した。

(クリックすると全ての写真が拡大されます)


そう、それはアルフレッド・ヒッチコック(1899〜1980)監督作品の「鳥」だった。

  サスペンス・スリラー映画の巨匠は「泥棒成金」、「ダイヤルMを回せ」、「裏窓」、「知りすぎた男」、「間違えられた男」、「めまい」、「北北西に進路をとれ」、「サイコ」等など多くの作品を手がけた。「鳥」は晩年(1963)の作品。
普段は無害なスズメやカラスなどの野生の鳥が突然人間を襲いだす恐怖を描いた傑作。
 

その数、数千羽であろう。
夕暮れ間近い空を飛び回り電線に鈴なりとなっている。


生物図鑑で調べると大きさと鳴き声と群れの様子ではムクドリのようだ。以後、毎日夕方になると同じような光景が繰り返された。

どこか近くにねぐらがある筈だ。
ある日薄暗くなるまで観察してみた。どうやら自宅から東へ直線距離で200m足らずの銀杏の林をねぐらにしているようだ。

数日後、高さ15m以上もある銀杏の樹が生い茂るねぐらに行って見た。
なるほど茂った葉も柔らかく空に向かって伸びた堅固な枝も止まるには格好の角度のようである。

  そんな日が3週間ほど続いた頃、地域住民から次第に気味悪がられ「地震が起きる前兆ではないか。早く何処かへ飛び去ってほしい」と言われるようになった。
朝は5:30頃、日の出前に飛び立ち、夕方6:30頃舞い戻ってくる毎日である。その頃から私は大群が勇壮に飛び立つ瞬間を写真に撮りたいと思い、連日自宅の二階の窓からシャッターチャンスを待つことになった。
 
矢張り銀杏の林から飛び立った。
曇天の日は少し時間が早いようだ。
晴天の日は特に勇壮に飛び立つ。


AM 5:28:01

AM 5:28:03

AM 5:28:05

  ある朝、上記の写真を撮るために5時に起きてねぐらのすぐ近くで待機していた。
5:15頃から喧しく鳴き始める。リーダーがいるのだろう。なかなかGOサインが出ないようだ。鳴き声が一段と激しくなり、そして一瞬、静寂になると同時に飛び立った。なぜか私には歓喜に溢れる瞬間のように見えた。
矢張り3つのグループがあるようだ。あっという間に頭上を去り西の彼方へ飛び去っていった。
 


  結局1ヶ月余りの間、毎日同じ行動を繰り返していたが10月に入ると突然いなくなった。
後日、 周辺住民から騒々しい鳴き声や糞害など生活に大きな不安と被害を与え続けていたことを知った。

ねぐらから離れて住んでいる私には想像も出来なかったが、正にこれはヒッチコックの「鳥の襲来」と言うべきであろう。ムクドリは日ソ及び日米渡り鳥条約に触れる鳥であるがこの貴重な体験を踏まえ、我々の生活環境を守るための対応として今後は人間の知恵の見せどころではないだろうか。
 
     
 
◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇
 
     
 

それから5年後、2009年12月27日の中日新聞に次のような記事が掲載され
た。都市部でムクドリの被害が発生しているようだ。他国へ渡らず日本に住
み着いてしまったようである。ムクドリは夜間、危険を察知し易い程度の明る
さ(照明)を好むので駅前の街路樹等は格好のねぐらになっているようだ。

 
     
   
 
クリックすると拡大します
 

次へ(サゴの曙)

 

 



Copyright (C) 2005 浜名湖コムタウン. All rights reserved.