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大札山のアカヤシオ    
シロヤシオの花を訪ねて    
お中道ハイキング    
     

 

ハイキングシリーズ
シロヤシオの花を訪ねて

敬宮愛子様の「お印(しるし)」はゴヨウツツジである。別名シロヤシオとも呼ばれ毎年5月、栃木県那須御用邸内でも白い花を咲かせている。
侍従によると、皇太子ご夫妻は散策の途中でこの花をご覧になり「春の芽生えの時期のこの花の美しさがお好きで、お子様にこの純白の花のような純真な心を持った子供に育ってほしいとの願いを込められた」と当時の新聞は伝えている。
お印は天皇や皇族方が身の回りの品に名前代わりにつける印章。皇太子様は「梓」、雅子様は「ハマナス」で北海道を訪れた際に印象に残った花だという。
 

別名:ゴヨウツツジ マツハダツツジ科
学名:Rhododendron quinquefolium
落葉低木
東北から近畿、四国地域に生える。高さ7mにも達する大型のツツジで樹皮が松に似ているのでマツハダとも呼ばれ、種小名もラテン語で5枚の葉を意味する。
4月から5月にかけて新葉が出るのと同時に純白の花を咲かせる。
(クリックすると全ての写真が拡大します)
 

 

静岡県川根本町にあるアカヤシオで有名な大札山(おおふだやま)の裏山に当たる蕎麦粒山(そばつぶやま1627m)とその隣の高塚山(たかつかやま1621m)周辺でシロヤシオの花を訪ねることした。

2003年5月24日 AM:6:00出発。
天気は晴れ、絶好のハイキング日和となった。丁度1ヶ月前、大札山にアカヤシオの花を訪ねた時と同様国道362号線を走る。新緑の若葉もひときわ濃さを増し車窓から入る風も初夏の爽やかさを感じる。

榛原郡に入ると緩やかな下りが続く、もうすぐ下長尾(しもながお)に着く頃だった。カーブを切る度にヒンヤリした冷気が漂う。不思議だ?何故?・・。天気は快晴だし無風だ。
良く見ると道路際には雪のような白いものが見える。車を止め、手にとって驚いた。氷だ。直径2cmほどの氷の塊がビッシリ・・「ヒョウだ!」寒さの原因は分かったが今時どうして?・・。
そこへ対向車がすれ違い。「下長尾の町はもっと積もっている。奥の山へは行けないぞ」と言われ半信半疑で向かった。

地元の人に聞いてみると「昨日午後3時頃から豪雨が降り4時頃から10分間位の間、猛烈なヒョウが降った」と言う。16時間も経った今も解けずに残っている状態からすれば被害が心配だ。

 
 

矢張り屋根が壊れた住宅もあったという。しかし、幸いなことにヒョウが積もっているのはこの下長尾付近だけらしいので先に進む。

ハイキングの拠点となる山犬段(やまいぬだん1404m)に通じる南赤石林道は2週間前の豪雨で2箇所が山崩れで通行止めになり5日前にやっと開通したばかりだ。昨日午後この地域に発令された大雨・洪水警報の状態で再び通行止めとなっていないだろうか?・・だが運良くその現場2箇所は落石はあったものの何とか通過することが出来た。

 
 
 

8:45 山犬段の駐車場に到着。浜北から85km。思ったより広い駐車場には既に40台程の車が止めてあった。
ここには川根本町立の無人の山小屋がある。50人を収容できる立派なものだ。ここから蕎麦粒山の山頂まで登りは40分。逸る気持ちを抑えながら新調したトレッキングシューズに履き替える。 野鳥のさえずりも心地よく、新緑もブナ、カエデ、ミズナラなどの広葉樹が多い。
すでに下山したハイカーが「今年の蕎麦粒山には花芽が少なく期待はずれだった」と聞く。

急きょ蕎麦粒山ルートの計画を変更して、山犬段→南赤石林道→五樽沢コル→三ツ合分岐→高塚山→三ツ合分岐→千石沢分岐→千石沢→南赤石林道→山犬段の長距離コースに変更することをカミさんに説明すると、シロヤシオの花が見られれば苦しいのも我慢するという返事。

事実、三ツ合分岐(みつごうぶんき)→千石沢分岐(せんごくざわぶんき)までは長時間急なアップダウンが続くらしい。ガイドブックにも「健脚者コース」となっているからだ。
途中で引き返す勇気も必要かもしれないがカミさん次第だ。無理することはない。

9:10 山犬段を出発。正面に蕎麦粒山、北には黒法師岳(2067m)の端正な雄姿が見える。

 
15分程歩いた所で突然真っ黒に日焼けした元気なお爺さんと出会う。挨拶を交わすと75歳前後であろうか。新潟から来て高塚山を踏破してきた様子である。板取山(1513m)を指差し今から登ると言う。そこが全国131回目の登山となると聞いて驚いた。

黒法師岳

  そんな鉄人も「昨日の豪雨とヒョウは恐ろしかった。途中ウッドハウスおろくぼ(宿泊先)まで行けなくて上長尾に引き返した」と言っていた。旅の無事を願い元気な後姿を見送る。我々は大きなパワーを頂いた。  

10:00
登山口の標識を見つける。細い九十九折の急坂を登り尾根に出ると五樽沢コルの分かり易い標識があった。

蕎麦粒山から約40分のこの地点はブナ、ミズナラの林が続く。細くて狭い登山道の左右の熊笹は綺麗に刈られ整備されている。

小休止していると三ツ合分岐へ向かうハイカーで行列となる。この辺りもシロヤシオの群生が見られるが未だ花が咲いていないようだ。上り坂が更に急になった所で見上げると満開のシロヤシオが初めて顔を見せた。
アカヤシオと違って新葉が出るのと同時に開花するのが特徴だ。
 
  愛子様ファンのカミさんの顔がほころぶ。私も初めて見る。確かに純白だ。花弁は大きく花数が多い。
ガイドブックには三ツ合分岐から高塚山そして千石平(せんごくだいら1621m)にかけた尾根伝いにも群生地があると記してあるので期待が膨らむ。
11:00 三ツ合分岐に到着。文字通りここを中心として東方に蕎麦粒山、南方に高塚山、北方に千石平と三方に行ける分岐点だが榛原郡と周智郡と磐田郡との郡境であろうか。
歩き出すと直ぐ行く手を阻むようにシロヤシオが満開の花を付けている。
高さ3m程の枝振りの良い樹だ。
 
  更に進むと急な下り坂となり、シロヤシオの群生地があちこちにあり、手で触れる位置にある。何れも満開の花を付けている。
私は興奮の余り足早になり、カミさんと離れてしまった。
 
  急坂を下りきると平らになり更に大きな群生地があった。
左右に満開のシロヤシオが続き、トンネルを潜るというよりシャワーを浴びているようだ。
ここが I 氏の言うベストシーンに違いない。振り返るとカミさんは未だ急坂の途中で花に近づきゆっくり観察しながら下りて来る。
 
「五葉ツツジ」のいわれの通り、爽やかな新葉が5枚束生している上に純白の花を咲かせている。派手さは無いが見飽きしない美しさである。
やがてカミさんが「ウワーきれい」と感嘆の声をあげて近づいて来た。まばゆいばかりの白さに「真っ白、上品で可愛い」。 愛子様ファンなので花とダブらせているようだ。
 
  11:45 三ツ合分岐へ戻る。
早速昼飯とする。この展望台広場では20人程のハイカーが弁当を広げている。不思議と汗は出てこない。快晴だが海抜1600m程だから気温が15℃位だろうか。

改めてカミさんに聞いてみた。すると「千石沢ルートのシロヤシオを見たい」という返事。いよいよ健脚者コースにチャレンジすることになった。
  12:20 三ツ合分岐を出発。
2,3分歩いて驚いた。午前中歩いてきたような整備された登山道は無く、急な狭い下り坂が続く。
ウグイスの声は大きいがハイカーの気配は無い。どうやらこのコースを行くのは我々二人だけなのか?足跡も途絶えてしまった。30分程のアップダウンを繰り返す。シロヤシオの群生地があちこちにある。新緑の中に純白の花が映える。更に30分ほど進むと正面に立ちはだかるような大きな岩山が我々の足を止めた。暫く休憩だ。
 
プロスキーヤーの三浦雄一郎さん(70)が世界最高齢でエベレスト(8848m)を征服した昨日の新聞記事を話題にする。重い酸素ボンベを背負い−20℃の寒さと嵐のような悪天候を克服して登頂に成功したのだ。
「これ位の坂で諦める訳にいかんよね」と言ってカミさんは腰を上げる。
 
 

「ところで、さっきのお爺さん、もう板取山についたかね?」林道で会った新潟の鉄人のことが気になったのだろう。ガイドブックを見せて説明する。山犬段から八丁段経由で75分だ。あれから4時間ぐらい経つ。彼のことだから今頃はその先の天水(1521m)、沢口山(1425m)を縦走して今夜は寸又峡温泉泊まりだろうか?時間をかけて何とか喘ぎながら難所を登りきった。

 
  暫くの間アップダウンを繰り返す。幹の根元がかじられた樹がある。この辺はニホンカモシカが生息するので餌のない冬にかじったのだろう。
南を振り返ると高塚山が遠くに見える。
  緩やかな下りが続く。急に道が無くなり、右手は谷底が見えない深いガレ場(深さ数百mの崖崩れ)。カミさんは怖がって尻込みするが戻るわけにいかない。右を見ないように樹と岩を掴まって何とか通り過ぎる。やがて歩きやすい下りになり湿地帯に出た。
あたり一面コバイケイソウ(ユリ科)の大群落が続く。花は未だ咲いていない。
 



コバイケイソウの花

  ガイドブックによると花期は6〜7月頃で白い大きな花を咲かせるという。登山道を塞ぐコバイケイソウを踏まないように下る。
「あったー!」静寂を破る声、先を行くカミさんが千石沢分岐の標識を見つけたようだ。時間は14:10。何と2時間もかかってしまった。予定より40分も費やしたことになる。
  ここから直進すれば30分で千石平(せんごくだいら1621m)である。近くにもシロヤシオの群生地がある筈だが、それは又の機会とする。
標識を右折して千石沢を下る。初めは緩やかだが次第にゴロゴロした岩場となる。見上げるとブナ林のグリーンシャワーだ。5分ほど下ると更に大きな岩場になる。昨日の豪雨ではかなりの水量で滝のように流れていたに違いない。しかし勾配がキツイせいか沢には水溜りは無い。
 
沢に沿った道は無いので岩から岩へ足を運ぶしかない。もし、登りだったら大変だ。
その時後ろから体格の良いスキンヘッドの男が岩場を飛ぶように下りて来た。浜岡町から一人で来たと言う。40代後半だろう。
  「今朝、この沢を登り、千石平から鋸山まで行って来た。シロヤシオが綺麗だった」と言う。上には上があるものだ。この下に沢の支流があり、清水が湧き出していると聞いて後を追ったが離されるばかりだ。

沢の幅が広くなった左手付近からかなりの湧水が出ている。千石平(1621m)からの伏流水だろう。カミさんは清水に手を浸し「うゎー、冷たくていい気持ち」と喜ぶ。
源流の辺りから下流に向かって一面が野生のワサビが群生している。
 
15:00 南赤石林道に出た。左手に富士山が見える筈だが霞んで見えない。浜岡の鉄人はここから何とマウンテンバイクに乗って帰って行った。なるほど山犬段からここまでマウンテンバイクで来る方法もあるとは・・。初心者の我々とは考え方が違うようだ。
ここから林道を歩けば山犬段の駐車場までは70分である。
  南赤石林道の帰路は常に右手が山、左が深い谷である。平らで、くねくねと蛇行しながら山の中腹を削り、幅4m程の林道が造られている。
後日、千頭森林管理事務所から聞いた話によると、この辺の地質は赤石スフェノイドといわれ、フォッサ・マグナが通っているため千枚岩になっているので崩れやすいとのこと。五樽沢コル登り口までの間、10箇所程山崩れで落石していた。また、崖崩れも激しく、2箇所程、足の竦む思いをしたガレ場を恐る恐る通過した。
 
16:10 出発点の山犬段に到着。
7時間ぶりに着いた駐車場にはまだ10台ほどの車が停めてあった。展望台で暫く休憩。カミさんも疲れているが念願のシロヤシオを存分に楽しんだので満足感が溢れていた。
丁度、マウンテンバイクで先に帰った筈の浜岡の鉄人がパジェロで帰るところだ。
ここから2km程下がった所に湧き水があり、飲料水として毎回容器(ポリタンク10本)に詰めて帰ると言う。つくづく山慣れしていることに感心する。我々も後を追い帰路に着く。

自然の美しさと厳しさを共に味わう一日だった。
 

次へ(お中道)

 

 

 

 

 

 

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